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子ども歳時記10
夜まで絵本はお休みしましょう
 きらきらと光あふれる季節になりました。洗濯、布団干し、バタバタと家事をすませて、公園にでも出かけましょうという気分になるほど、おひさまパワーはすごいなと改めて思います。身体を動かすのが嬉しくて楽しい時にも「絵本を読みましょう!」なんてことはいいませんよ。夕方か夜まで本にはちょっとお休みしてもらいましょう。
 子どもと一緒に外に出ると、空の青さや雲のかたち、風の心地よさ、色鮮やかな新緑など身近な自然の営みの中にも、驚きや感動がたくさんあることに気づかされます。
おひさまがいっぱい
『おひさまがいっぱい』
(童心社)
 子どもは大人が忘れていたこと、見えなかったことなど、いろいろなことを教えてくれるんですよね。(それも、押しつけがましくなく、頭ごなしでなく、すんなりと)
 自然を楽しむ中での新発見、驚きや感動体験は、「なぜ?」「どうして?」と疑問や探究心にもつながります。子どもたちは本来「もっと知りたい」があふれています。でも今の子どもたちは、もっと知りたいと思う間もなく、次から次に情報を浴びていて、好奇心を持つ間もないようです。映像や電子音声に邪魔されない、考えたり感じたりする自分の時間が、疑問をもったり、情報や知識を智恵に昇華させてもくれるのではないでしょうか。「ちょっと待って」と前のページを再確認したり、好きなページを繰返し見たり、絵本の時間はその子のペースで体験することができます。
土曜の朝は絵本の時間にしよう
 4月23日は今年から「子ども読書の日」に、またこの日から5月12日までの3週間は「子ども読書週間」ですが、ご存知でしたか? 今、子どもが本に出会うことの重要さを認識する大人が増えてきました。
 小中学校は、毎週土曜日が休みになりました。せっかく出来た時間です。少しの時間だけでも「土曜の朝は絵本の時間」にしませんか? 親子で楽しむ絵本の時間をつくりましょう。
 読み慣れてない人にも読みやすい絵本を紹介します。『おひさまがいっぱい』(詩・よだじゅんいち/画・ほりうちせいいち 童心社)は、素敵な幼年詩の本です。光と影の織りなす印象派風の絵が絵本ではめずらしく『ロボットカミイ』と同じ作者の絵だと気づく人は少ないでしょう。
 年度始めの集団読み聞かせにも短い楽しい絵本からどうぞ。『おばけパーティ』(ジャック・デュケノワ作/おおさわあきら訳 ほるぷ出版)このシリーズは子どもたちに大人気です。
おばけパーティ
『おばけパーティ』
(ほるぷ出版)

すてきな詩にであいました
ある日の朝、こんな詩にであいました。
〈おみおくり〉
おみおくりが/だいすきです/おうちで/ばいばいじゃ/つまらないから/
かどまでいって/しんごうまでいって/いそいで/かえってきます

それから何ヶ月もしないうちに再び素敵な詩が目にとまりました。
〈こもちししゃも〉
おさかなは/だいすきだけど/こもちししゃもはたべられません/
おかあさんとこども/いっぺんになんて

 どちらも産経新聞の『朝の詩』に掲載されていたものです。こんなやさしい、あったかい詩の作者は平岡あみちゃんという7歳の女の子でした。きっと小さい頃から愛情をいっぱい受けて、たくさんの言葉の中で育ってきたのでしょう。
言葉の栄養失調に気をつけて
 愛されていると優しくなれるという経験をもっている大人は多いはずです。そして、自分の気持ちを言葉にする時、使いこなせる言葉をどれだけもっているかで、伝わり方に差が出てきます。わかってもらえたり共感を得られた時にはうれしさや安心感が、わいてくるものです。わかってもらえないと、イライラしたり怒ったりと気分がささくれてくることも多いですね。
トビウオのぼうや
『トビウオのぼうやはびょうきです』
(金の星社)
 どうぞ、子どもたちにたくさんの言葉を食べさせてあげてください。現代の子どもたちは言葉の栄養失調で、苦しんでいるようです。自分の気持ちを言葉で整理、統合できなくて、無気力、不安、怒りに支配されているようにみえます。
 今から20年前、シカゴ市の教育長が「もしも世の親たちが、学齢前のわが子に日に15分、本の読み聞かせをするようになれば、学校に革命を起こすことができるでしょう」と発言しています。昨年12月、日本でも「子どもの読書活動推進法」が施行され、子どもの読書活動推進を「国や自治体の責務」とし、保護者には子どもの読書機会を増やすよう求めています。こうまでしないと、本離れに歯止めがきかないというのと同時に、読書が子どもたちの問題解決に役立つと見直されてきたということではないでしょうか。
もういっかい 読んで!
 むずかしい理屈を並べなくても、読んでもらった幼い子どもたちは「もっともっと読んで!」と要求してきます。大好きな人のあたたかい声に包まれる時間が心地いいから。入学・進級のこの季節には『くんちゃんのはじめてのがっこう』(ドロシー・マリノ作、まさきるりこ訳/ペンギン社)、もう読まれましたか? 大きな子なら自分の成長を感じる子や、幼い日を思い出す子もいるのではないでしょうか。3月に忘れずに読んでほしいのが『トビウオのぼうやはびょうきです』(いぬいとみこ作、津田櫓冬絵/金の星社)。1954年3月の第5福竜丸の事故後に創られた絵本です。大人はぜひ解説まで読んでほしいと思います。 くんちゃん
『くんちゃんのはじめてのがっこう』
(ペンギン社)

伝えていきたい風習・由来
 みなさん、どんなお正月を過ごされましたか?
 子どもの頃はお年玉がもらえるのを楽しみに待ったものですが、大人になった今ではこわいお正月…かもしれませんね。とはいえ、久しぶりに親戚と集ったり、普段とは違う行事を楽しみたいですね。そして、子どもたちに何かを伝えていきたいですね。
 とはいうものの、私自身「鏡餅」の由来すら知りませんでした。昔、鏡は円形で、魂を象徴する神器だったのがその名の由来で、生命力を授かるのだそうです。また、「裏白」は潔白と、葉が対になっているところから、夫婦円満を表しているそうです。若葉が出るのを待ってから古い葉が落ちる「ゆずり葉」には、子孫繁栄の願いが込められているようです。昔から伝えられてきたことには、何かしら意味があるようです。おせち料理に使う黒豆はまめに働くとか、こじつけのようなものもありますが、大人でも意味や由来を知るとちょっとおもしろいですね。こういう知る楽しさを子どもも大人ももっと体験できればいいな…と思います。
絵本は人生に三度
絵本の力
『絵本の力』
(岩波書店)
 子どもに何かを伝えようとすると、自分の知らないことの多さに気がつきます。そして、子どものおかげで新しい世界を感じることも多々あります。『絵本の力』(河合隼雄・松居直・柳田邦男著/岩波書店)の中で、柳田邦男氏は「絵本は人生に三度読むべき本」と書いています。それは「子どもの時、子どもを育てる時、人生の後半に入った時」そして「生きていく上で一番大事なものは何かといったことが、絵本の中にすでに書かれています」。子どもがいてくれたからこそ出会った絵本の数々は、私にも多くの世界を教えてくれます。
 この季節には『ゆきみち』(梅田俊作・佳子作/ほるぷ出版)などいかがでしょう。孫に語りかける「うんとなけ、きがすむまでなくがええ」というおばあちゃんの言葉がとても温かいのです。そして、いつも見守ってくれている祖母の存在を、孫は感じているのです。それと、節分の頃にぜひ読んで欲しいのが『おにたのぼうし』(あまんきみこ作・いわさきちひろ絵/ポプラ社)です。やさしい鬼のおにたがせつなく、やさしさって何だろう…と考えさせられます。 おにたのぼうし
『おにたのぼうし』
(ポプラ社)
絵本は子どもだけのもの?
 絵本の魅力を知る、というのは子どもがいたからという人がほとんどではないでしょうか。私もその中の一人です。子どもが育つのにとても役に立っている気がしますが、大人の私にもいいのです。元気がもらえて、優しくなれて、包んでくれる。今年は、あなたも絵本体験してみましょうよ。ほ~っとあったかくなれますよ。

~絵本フォーラム第19号(2001年11.10)より~
 世界のあちこちで恐ろしい出来事が続いています。命がこんなにも軽く扱われていいのでしょうか。テロ事件では多くの人たちが命を奪われ、その子どもたちは親を失いました。そして、奪ったり奪われたりする連鎖を繰り返そうとしています。
 テロリストたちは、自らの命をも道具にして目的を果たしました。信仰や教育によって、自分の命を道具にしたり人の命をモノのように破壊することも当然だと思わされてしまうということはとても怖いことだと思います。彼らには、命がかけがえのないものだ、と伝えてくれる人はいなかったのでしょうか。
伝えよう、いろんな思い
 内戦が続いている国の子どもたちに大きくなったら何になりたい? と質問すると「大きくなるまで生きていたい」、という切ない答えが返ってきたそうです。私たちの子どもがこんな言葉を言わなくてもすむような社会にしなくてはなりません。今や平和は当たり前にあるものではなく、みんなで願うことでつくり保つものとなってしまったのではないでしょうか。今、子どもたちに、命の重さや愛や平和を伝えていかなければならないのです。そして、それは私たち大人のつとめなのです。
しろいうさぎとくろいうさぎ
『しろいうさぎとくろいうさぎ』
(福音館書店)
『しろいうさぎとくろいうさぎ』(ガース・ウィリアムズ作・まつおかきょうこ訳/福音館書店)は、白いうさぎと黒いうさぎの愛情を絵本にしています。愛という言葉を使わないのに、幼い子どもにも愛情を伝えてくれています。ゆっくりとうさぎの表情を読みとっていきたい絵本です。『モチモチの木』(斉藤隆介作/滝平二郎絵・岩崎書店)も、愛情や本当の勇気について伝えます。切り絵の美しい絵本ですが、幼い子のなかには怖がる時期もあります。黒が強いからでしょうか? そんな時は少し成長を待ってあげてください。国語の教科書でしかご存知ない方はぜひこの絵本で〈モチモチの木に火がついてる〉ページをご覧ください。圧倒される美しさです。
 生活の中で親の言葉で、命や愛や平和を子どもに伝わるように語るのは大変だし努力がいることかもしれませんが、絵本は親の言葉でないからこそ、教訓的でなくメッセージが伝わるのではないでしょうか。
絵本は子どもだけのもの?
 『1993年のクリスマス』(レスリー・ブリカス文/エロール・ル・カイン絵・ほるぷ出版)では、あたたかい心をくばることがわしのつとめ…といっていたサンタクロースも、おろかで欲ばりな人間にほとほとあきれはててしまいつかれてしまったようだ。サンタさんがつかれてしまう世界と、来たくなるような世界を、親子や教室で話し合うのもいいかもしれませんね。

1993年のクリスマス
『1993年のクリスマス』
(ほるぷ出版)

お疲れさまでした
 全国のお母さんたち(そして一部の育児に関わったお父さんたちも)お疲れさまでした。やっと、夏が終わりました。暑さをものともせずくっついてまわり、パワフルにもっと遊んで攻撃を繰り返す子どもたちから少しだけ解放される(!?)季節がやってきました。ホッとされている方も多いのではないでしょうか。深呼吸して肩から力を抜いて、ちょっとリラックスしたら、まあるい言葉や笑顔もふえるのではないでしょうか。
心にもうるおいを
 その程度ではとても笑顔なんて…という方には、紫外線で傷んだお肌を栄養クリームでケアするように、心のカサツキには『海外秀作絵本』(ほるぷ出版)がおすすめです。
 心のケアに一番効果的なのは、お子さんが眠ってしまったあとの大人の時間に、貴方の大好きな人に絵本を読んでもらうこと。2~3日でも体験してみるときっと心が優しくなっていることでしょう。残念ながら読んでもらうことがかなわない方は、一人になれる時間をまず確保して下さい。特にお母さんは、「母でも妻でも嫁でもない私にもどる時間」を作ってください。5分でも10分でもかまいません。そして、出来れば好みの飲み物を用意して、ゆっくりと絵をながめながらページをめくるのです。
 『にぐるまひいて』(ドナルド・ホール文、バーバラ・クーニー絵)は、あるニューイングランド人の一家の一年間を淡々と描いています。古き良き時代のアメリカの暮らしぶりを、優しくのどかに伝えてくれてもいるのですが、生活するってこういうことだよね、家族ってあったかいものだよね、と思い出させてくれたりもするのです。『キューピットとプシケー』(ウォルター・ペーター文、エロール・ル・カイン絵)で熱い恋を思い出すもよし。『たのしいホッキーファミリー』(レイン・スミス作、青山南訳)の上質のナンセンスで笑うのもいいですね。そんなゆったりとした気分のこんな時間が大人にも必要なんです。

「たのしいホッキーファミリー」
(ほるぷ出版)
にぐるまひいて
「にぐるまひいて」
(ほるぷ出版)

「キューピットとプシケー」
(ほるぷ出版)
あなたの声につつまれて
 ほるぷフォーラムでは「絵本講座」を出前しておりますが、時間に余裕がある講座の最後には大人のために絵本の読み聞かせをすることがあります。そこで初めて絵本を読み聞かせてもらう体験をされた方も少なくないようです。「大人にとっても、嬉しいものなんですね」とか「涙が出そうになりました」などの感想も頂いています。集団の中で初対面の人から読んでもらっても、うれしいあたたかい気持ちになる人は多いのです。ましてや、自分のために大好きな人から読んでもらうことの幸福感を想像してみてください。そして、そんな気分の時には人に対しても優しくなれるのではないでしょうか。 子どもも同じです。うれしくて楽しい毎日を過ごしている子がイジワルな子にはならないでしょう。子どもでも「いやし」たいことがあって、山ほどの絵本を抱えてくることもあるのです。どうぞ読んであげてください。あなたの声で抱きしめてあげてください。
子ども歳時記10

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